
花影会(かえいかい)は、昭和54年に故・武田太加志(たかし)が、晩年の芸道の集大成として発足した公演です。故人は、同会を通じて、能の芸術性の高さと深さを追求することを目指しました。50回を超えた花影会は、今も変わらずに発会の理念を受け継ぎ、一期一会の充実した企画をお届けできるよう努めています。
今回の花影会は、全演目「源平合戦」に関連した曲を上演致します。初番の能「屋島」は言わずと知れた春の名曲であり、歴史上の人物として英雄的な位置づけでもある源義経が主人公となります。元来、観世御宗家の〈一子相伝〉である、大変重い〈弓流〉の小書(特別演出)をお許し頂き、御宗家自ら地頭をお謡い頂く形にての上演となります。また、同じく大変重い扱いの間狂言「奈須與市語」は、若手のホープ・野村裕基氏にお願い致しました。「頼政」は源氏側の老将、大変扱いの重い仕舞となります。狂言「清水座頭」は、源平絡みの大曲という事で、人間国宝・野村万作師自らお選び頂きました。舞囃子「船弁慶」は大人気曲、平知盛が長刀を使う舞は、理屈抜きにお楽しみ頂ける事でしょう。留の能「大原御幸」は、中々上演されない大曲です。平清盛の娘・安徳天皇の母でもある建礼門院徳子は、源平合戦で入水したものの、思いがけず源氏方の兵に命を助けられ、傷の癒えぬまま出家します。そこに後白河法皇が訪れ、入水当時の有様を物語るという、静かながらも壮大なスケールの演目です。
本会を通して、当時の人々の様々な立場や生き様に思ひを馳せ、共にひと時をお過ごし頂けますと幸いに存じます。皆様方のご来場を心よりお待ち申し上げております。
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